長らく国の経済力を表す指標としてGDP(国内総生産)が用いられている。GDPとは、端的にいえば、その国で一定期間に稼ぐお金の総額を表すものだ。ある国で1年間にどれだけ儲けがあったのかを数値化したものがGDPである。
ただし、国の規模の違いもあり、その総額ばかりを競うことは必ずしも国民の繁栄とイコールではないだろう。この総額を人口で割った「一人当たりGDP」の方が国民にとっては重要なものだと考える。
さて、IMF(国際通貨基金)の発表によると、この一人当たりGDPで日本は、かつて世界ランキング1位、2位を競っていた時代がある。ただ、残念ながら2021年は米ドルベースで27位となっている。トップのルクセンブルグの3分の1だ。
自国通貨(円)ベースでのGDPの総額は、この30年の間、500兆円台を推移している。同期間、人口は減っている。そうなると一人当たりGDPは増えてもおかしくないと考えられるのだが。
GDPとは別に、国力を表すものとして自国通貨(日本の場合は円)の為替レートがある。2011年に1米ドル=75円台まで円は買われたが、その後は徐々に値を下げ、当時の半分の価値にまで値を下げた。こちらも日本の国力の低下を示しているものだ。
相場格言に「もうはまだなり、まだはもうなり」という言葉がある。円は「もう」こんなに下げたのだから、そろそろ下げ止まるかな。しかし、英ポンドは過去、米ドルに対し、往時の4分の1のまで下げた。歴史に学ぶと、円の価値低下の終息は「まだ」なのかもしれない。個々人が資産防衛を考える必要性は、すぐそこまでやってきている。

代表取締役CEO山﨑泰明
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