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百万両貯金箱と新NISA 

 1953年~1962年にかけて野村證券が個人の投資を促すために100万個を超える数の木製の貯金箱を配布した。「百万両貯金箱」だ。カギを保管する野村証券の社員が定期的にお客様を訪問し、5000円貯まると投資信託を1口購入するといった仕組みの運動を展開したのだ。


 それから半世紀以上が経った今、2000兆円を超える日本の個人金融資産に占める投資信託はわずか90兆円、4.4%の割合でしかない。長らく続く預貯金の低金利(年1%にすら遠く及ばない)時代においても、この状況である。


 ここにきて岸田首相は「資産運用立国」宣言を行なった。昨年度から高校の家庭科や現代社会の授業でも金融や投資に関する授業が始まったと聞く。これらの取り組みがどれだけ資金シフトを引き起こすのかは未知数であるが、かなり遅れた対応と言わざるを得ない。


 預貯金と投資信託を始めとしたリスク商品の大きな違いはいわゆる「リスク」の存在である。リスクを取らずに、何年預けていても増えてはいかない預貯金を取るのか、リスクはあっても将来の人生設計に役立つ金融商品(ここでは投資信託)を取るのか?

 

仮に毎月1万円ずつの積み立てを20年間継続し、年間4%の運用成果が望めるならば、20年後の元利合計は3,667,746円となる。投資金額は240万円だから、1,267,746円の「儲け」を手にすることができるのだ。投資した元本が63%増えたことになる。おいしい話だ。


 しかし、どのようなものにも税金はついて回る。通常ならば利益金の20.315%分が目減りしてします。これは大きな問題である。利益の手取り額が20%も変わるのである。その税金を失くしてくれる制度がNISA口座である。値上がりした分がすべて手取りの額となるのだ。


 このような魔法の手段があるに関わらず、NISA口座の利用者は全人口の6分の1程度である。来年からはNISA口座の制度変更も行われる。より金額が増え、より期間が長くなる。今のうちに考えておく必要があるだろう。

 

『銀行よさようなら、証券よこんにちは』と言われ、百万両貯金箱による投資信託への投資の誘いがあったにもかかわらず、こんな状況だ。今度こそ、将来の豊かな生活のためにNISA口座を活用した資産形成の時代となってもらいたいものだ。

代表取締役CEO 山﨑泰明



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